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由美のヨーロッパ探訪記-住宅・生活あれこれ

 

由美のヨーロッパ探訪記No.8 「アイルランドの不動産ブームの低迷。世界的な潮流だが要因に違いも」

アイルランドは1990年代のめざましい経済成長のおかげで、国の住宅価格は1996年から2006年の10年間で283%の上昇、ダブリンにおいては366%も上昇しました。しかし、2007年からは下降し始め、価格は平均10%の下落、首都ダブリンの中古マンションにおいては17%もの下落と発表されました。まさに日本の住宅バブル崩壊が蘇ってきますが、少し事情は異なるようです。今回は不動産ブームとその背景についてレポートいたします。

 

アイルランドは1990年までは西欧での最貧国の1つでした。失業率は20%を超え、賃金は安く、国の優秀な人材は職を求め国を離れていきました。政府はこういった人材の流出を防ぐため、海外企業に対する法人税等の優遇措置を取り入れ、雇用を創出しました。欧州連合(EU)統合とアメリカを中心とした外資からの投資により急成長を遂げ、1995年から2000年の経済成長率は約10%と、世界において最も成長した国でもあります。1999年、EUに共通通貨であるユーロが導入されたことで、アイルランドは最初の立ち上げから参加を果たし、イギリスが参加を見送ったことでヨーロッパの英語圏として有利な立場となりました。経済の中心であるアメリカと同じ言語ということで、アメリカ企業の欧州拠点となり、経済の活発をますます促したのです。失業率は最高4%台にまで改善されました。
こういった好景気の状況で、2004年にポーランドがEUに加盟すると、自国の労働市場を開放し、安価で大量の労働力を確保しました。人口420万人のアイルランドに、これまでに20万人超ものポーランド人が出稼ぎに来たと言われています。それに加えチェコやスロバキア、リトアニアなどの東欧諸国からの移民もあるわけで、これだけの人数が一気に流れてきたことと自国の人口増加で、住宅供給ラッシュが続きました。
住宅価格の前年比推移

住宅価格の前年比推移
(赤は名目価格 青は実質価格)

 


東欧諸国の人々は数人で家を借りるというシェアハウスの方式を取り、もちろん家主はアイルランド人。労働移民の増加と、シェアハウスで1人当たりのコストを抑えられることから、オーナーが強気になり家賃相場も上昇しました。2006年までの欧州中央銀行による低率2%政策金利のおかげで、投資目的の購入者も増え、まさに不動産ブームの真っ只中を走りました。不動産バブルが起こっているような状況では低金利は好ましくないのですが、ユーロ加盟国のため自国の中央銀行での金利決定権がなく、欧州中央銀行で決定されるのです。通貨と金利の統合は、ドイツとフランス経済に優位に働いているとも言われています。
2002年を100とした場合の価格推移

2002年を100とした場合の価格推移
  (赤は住宅価格平均、青は賃貸の家賃価格)


ダブリン郊外の売れ残る新築アパート
ダブリン郊外の売れ残る新築アパート
しかし、2006年以降の7回もの政策金利引き上げで、現在は4%にまで上がりました。不動産市場に陰りが見え始めた背景には、この金利引き上げとアメリカの経済低迷が影響しています。欧州の中で特にアメリカと結びつきが強いだけに、その影響をどこまで受けるのかが注目されます。そして何よりも、購入希望者は「まだ下がるだろう」という思いから購入に踏み切れず、売出し中の物件は価格を下げていかなければなりません。新築住宅においてはキッチンやお風呂、壁紙や床という価値を付けて販売し直し、ディベロッパーも必死です。アイルランドでは通常、新築分譲時には大まかな間取り以外は「空っぽ」状態なので、販売価格に数百万円の内装費がかかります。

欧州中央銀行と日本銀行の政策金利推移

一方、賃貸住宅においては、まだ分譲住宅ほどの下落は見られませんが、家賃の値下げ交渉は行われているようです。東欧諸国では経済発展で失業率が劇的に低下し、労働移民達が祖国へ帰ることが懸念されています。大量の住宅が空室になるからです。実際、アイルランド同様にポーランドの労働力を大量に受け入れたイギリスでは、通貨ポンドの価値がポーランド通貨ズウォティに対して34%も下がったことや、ポーランドでの賃金が上がり、生活コストの高いイギリスでの貯蓄性向がポーランドのそれと大差がなくなってきたことで、国へ帰るポーランド人が見え始めました。また、アイルランドの建設業での前雇用の落ち込みが前年比11%となり、今年の失業率は5.5%にまで増加、来年には6.6%になるであろうと予測されています。このセクターでの労働移民が職を失えば、必然と国に帰るという選択がなされます。急激な経済成長の光がまさに陰ってしまいました。

日本の不動産バブルの背景と明らかに異なることは、アイルランドという国が「EU圏の中の1つ」という考えのもとにあると思われます。各々が独立国ではあっても、経済的な協調が求められます。一国だけが突っ走っていくことをコントロールされます。言いかえれば、経済が悪い方向へ向かったとしても、日本のような長期にわたる低迷を味わうことはないのではと予測できます。
(現地の新聞や統計を訳しているため、微妙なニュアンスの違いがあるかもしれません。どうぞご了承ください。)

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