アイルランドの持家率は75%とヨーロッパの平均59%をはるかに上回っています。日本の平均は60.9%(平成15年総務省統計)です。アイルランドでは、日本のようにディベロッパーによる民営の賃貸住宅がほとんど存在しません。民営の賃貸といえば、住宅の所有者(主に個人のオーナー)から投資用や余った住宅を借りる場合がほとんどで、注目すべきは家具や食器が全て用意されていることです。今回は賃貸住宅を見てみましょう。
まず、賃貸は大きく分けると2種類あります。家(アパートならユニット)全体を借りる方法(レット)と、ベッドルームのみを借りる方法(シェア)です。前者は一般的に日本で見られる借り方ですが、後者はいわゆるシェアハウスで、アイルランドの若者の間では主流です。不動産広告・インターネット上でもレットとシェアとで必ず2種類分けて掲載してあります。
レットの場合ですが、日本と異なることは家具付きがほとんどです。DAFTというアイルランド最大の不動産ウェブサイトでの賃貸コーナーでは、約90%が家具・食器付きです。引越し業者も必要なくスーツケース数個で引越しできます。家具付きでない賃貸住宅は、主にダブリンの高級地区で家賃4000ユーロ(64万円)以上の豪邸です。豪邸を借りるほどの資金のある人は、好みの家具を備えたいという要望があることと、豪邸に見合った家具を用意するにはオーナーの負担が増えてしまうという理由があるようです。 |
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リビングルームにはカーテンもあります |
ベッド用のランプまで装備されていることもあります |
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家具付きのレベルはオーナーがどこまで備えたかにもよりますが、ベッドならフレームとマットが各寝室に備えてあります。シーツ・毛布・掛け布団・枕は借主が用意します。ダイニングセットにソファー、食器類・冷蔵庫・電子レンジ、洗濯機は通常装備ですが、TVはオーナー次第になります。湯沸し器やトースターも付いていることが多いです。日本のウィークリーマンションを想像できますね。アイルランドではこれが当たり前なのです。
契約は6ヶ月から2年更新で、1年更新が最も主流です。家を借りるプロセスも日本より簡単で、最初の諸経費は家賃と1ヶ月分の敷金のみで、礼金がありません。更新時の手数料はありませんが、契約期間内に契約を解除する場合などは解約料を払うことがあります。 |
さてシェアハウスですが、若者のシェアハウスが当たり前となっているのは、家賃の出費を抑えることが前提ですが、そもそも6畳一間のワンルームというものが存在しないので、安い家賃の住宅がありません。布団と折りたたみ卓袱台を使用して、空間を確保すればよい日本とは文化が異なります。室内でも靴を履いたままの生活ですので納得できますね。ひとつの部屋にベッド・ダイニングテーブル・ソファ・TV等を備えるには広い空間必要になるでしょう。アメリカならスタジオルームというものもありますが、アイルランドには1人暮らし用の住宅がほとんどないのです。こういった状況下では、プライバシー重視の考えが薄れてくるのも仕方ありません。
友達や同僚など数人で一件の家を借りるのはごく当たり前となっていますが、オーナー滞在型のシェアハウスもよく見られます。初めて家を購入した人が余った部屋を貸し、その収入をローン返済の足しにして出費を抑えるのです。若い時から持ち家志向の高いアイルランドでは、就職すれば20代で家を購入することも珍しくありません。シェアハウスの家賃は1ヵ月単位や1週間単位とさまざまで、契約期間も交渉次第で期間を決めているものが多いです。家具はベッドだけでなく、掛け布団やシーツも用意されている場合が多いので、借主の入れ替りが頻繁となります。 |
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最低限のキッチン道具が備わっています
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アイルランドの賃貸住宅は個人の所有者から借りる「分譲賃貸型」で家具付きですので、マイホームを持つまでの一時的な居住形態ということがわかります。英国に支配されていた歴史的背景から、「居住の安定=持家志向」が高まったとも言われています。高校を出れば親元を離れて自立し、シェアハウスしてお金を貯め、若いうちから家を買うことで、持家率が他の国より高いのかもしれません。最後に日本とアイルランドの持家率の比較をご覧ください。
住宅の所有関係別割合 |
日本 |
アイルランド |
世帯の種類 |
割合(%) |
所有関係 |
割合(%) |
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所有関係 |
割合(%) |
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主世帯 |
99.5 |
持家 |
60.9 |
持家 |
75.0 |
借家 |
36.5 |
公営 |
4.6 |
借家 |
20.5 |
公営 |
6.8 |
公団・公社 |
2.0 |
民営 |
26.7 |
民営 |
13.7 |
給与住宅 |
3.2 |
その他 |
0.5 |
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不明 |
5.0 |
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合計 |
100.0 |
合計 |
100.0 |
(日本のデータ:総務省統計局 平成15年住宅・土地統計調査より、アイルランド:2006年国勢調査より)
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