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由美のヨーロッパ探訪記-住宅・生活あれこれ

 

由美のヨーロッパ探訪記No.15 「ラグーナ(潟)に造られた水上都市に住む〜ベネチア編〜」

イタリアのベネチアは1つの都市でありながら交通渋滞が一切ありません。自動車の進入を禁止した歩行者天国の街は、そのユニークさと水辺の美しさから誰もが訪れてみたい憧れの街ではありますが、実は日常生活ではさまざまな問題も抱えています。今回は水上都市としてのベネチアを見ていきましょう。

ベネチアといえば、「水の都」や「アドリア海の女王」などと呼ばれるイタリア屈指の観光地で、世界遺産にも登録されています。もともとベネチアの土地は、大陸から流れてきた土砂と、アドリア海の波と風の力で作られた湿地帯(潟:ラグーナ)でした。5世紀、北イタリアの住民が、異民族の侵入から身を守るためにこのラグーナに避難し、小さな集落を作ったのが始まりと言われています。ラグーナ上に木を打ち込み、その上に板を敷きつめ、さらに石材を積み上げ、人工の陸と運河を整備して水上都市を作っていきました。現在では大小120ほどの島に400もの橋、縦横に走る運河の数はなんと176。これほど完全な、しかも歴史ある人工の水上都市は世界中どこを探してもベネチアだけと思われます。イタリア本土との間に鉄道が敷かれ、自動車用の橋(約4km)も結ばれていますが、電車も自動車も入り口までとなり、自動車は専用の駐車場に置き、島内は水上バスか徒歩の移動となるのです。

 
アドリア海に浮かぶ周囲11kmのベネチア本島

アドリア海に浮かぶ周囲11kmのベネチア本島

 

警察の水上ボートです

警察の水上ボートです
 

ベネチア本島の人口は6万2千人。公共の交通手段はヴァポレットと呼ばれる水上バスか水上タクシーで、個人所有のモーターボートも日常生活に欠かせません。パトカーや救急車、郵便配達や食料運搬にいたる全てがボートになります。このシステムは昔から変わっていません。何路線もの水上バスは、まるで地下鉄のような感覚で乗ることができ、路線によっては急行もあります。幹線道路のような大運河では、水位によっては運行に支障が出ることもあるようですが、この運行時間はかなり正確なのには驚きです。電車が10分遅れるのは当たり前のイタリアでは珍しいかもしれません。住人は水上バス専用の定期券(顔写真付き)を持ち、観光客で水上バスが混み合うときでも優先的に乗れるそうです。

 

街を歩いてみると、車も自転車も通らない道は快適そのものです。曲がり角で車を気にせず、地図を見ながら歩いても自転車とぶつかる心配もなく、左右を見ることも忘れてしまいます。のんびり歩く観光には最適です。しかし、実際に現地の人と思われる年配の方が、買い物袋をいくつもぶら下げて水上バスに乗っているのを見ると、普段の買い物までも水上バス移動とはいかに不便なことかと思ってしまいます。水上バスは車椅子乗船も可能ですが、完全に持ち上げて乗せなければいけません。船によっては大きな段差もあります。また、ヨーロッパの旧市街地同様ベネチアの歩道は石畳で凹凸が多く、人にやさしい街とは言いがたいです。

 
大運河を通る水上バスが市民の足となります

大運河を通る水上バスが市民の足となります

 

中心部サンマルコ広場の通常時(上)

中心部サンマルコ広場の満潮時の浸水(下)

中心部サンマルコ広場の通常時(上)と満潮時の浸水(下)
 

このベネチアの最も深刻な問題は高潮と地盤沈下です。水浸しになったベネチアの様子をTVで見た方も多いと思いますが、満潮時の20〜30cmの浸水はよくあることで、中心地サンマルコ広場では仮設足場設置も手馴れたものです。11月から3月頃に吹くアフリカの季節風「シロッコ」が発生すると、アドリア海を押し上げ、ベネチア湾では1m以上もの高潮が発生します。この時期以外でも異常気象で季節風が発生することもあります。約100年前は、110cm以上の高潮発生が10年間で10回以下でしたが、近年の10年間ではなんと50回以上も。まさに地球温暖化の影響をまともに受けているのがわかります。現在では街の水没を防ぐため、アドリア海の3ヶ所に79基の可動式水門を設置する計画の一部が実行されていますが、環境問題や景観を配慮した反対意見も強く、完全に二分状態です。

また、地盤はこの100年で13cm沈下し、海面は10cm上昇しました。湿地帯のラグーナに木を打ちつけて建物の土台を作った工法なので、土台そのものが弱いのですが、地下水の汲み上げや地球温暖化による海面の上昇が、さらに事態を悪化させているのです。

ベネチアは観光産業以外に依存できるものがなく、物価は上がり、若者はイタリア本土へ流出していきました。人口は5分の1にまで激減です。超高齢化の現実と向き合いながらも都市景観は変えられず、高齢者には歩きにくい石畳の歩道と水上バスの大きな段差、車の禁止など、世界遺産の街に住む人々の日常を垣間見た気がします。治水対策にしても、景観を大事にして昔のままのベネチアを守る意見と、水害を防ぎ市民の日常生活を守る意見とで分かれています。やはり歴史的産物を維持しながらの都市計画には限界があるのでしょうか。水との共存は、島国の日本でも今後の課題であるとつくづく感じます。



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